研究概要 |
腫瘍核医学においてT1-201やTc-99m-MIBI(以下,MIBIと略す)のような脂溶性カチオンが一部の腫瘍に集積し,腫瘍イメージング上有用であることは良く知られている。T1-201およびMIBIはいずれも心筋血流シンチグラフィに用いられているが,最近の研究では心筋集積機序に大きな違いがあり,異なった輸送系により細胞内に取り込まれるとともに,細胞内での動態も異なることが報告されている。特にMIBIは細胞内でその多くがミトコンドリア画分に存在し,ミトコンドリア膜電位に依存した動態を示すと考えられている。事実,心筋細胞の膜電位は他の組織に比べてより低いことが知られている。同様に,正常細胞に比べて腫瘍細胞のミトコンドリア膜電位はより負に帯電しているものもあることから,この電位差に依存してMIBIが腫瘍に取り込まれているものと考えられる。そこで,この様な脂溶性カチオンの腫瘍集積性に関してモデル実験系を用いて検討し,その集積性を利用した病態機能分析を本研究の目的として検討を行った。 種々の腫瘍細胞系を準備し,ミトコンドリア分画を用いて膜電位の絶対値を測定した。インビトロ実験系ではミトコンドリア膜電位とMIBIの取り込みに高い相関性があることと共に,FDGとの取り込みに相関性があることが確認されたので,さらにインビボでの検討を計画した。これには平成18年度に設置された動物用PET/SPECT/CT装置を用いることとし,FDGとシングルフォトン核種の連続的イメージング法を開発した。
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