研究課題
本年度は、動脈瘤壁への効率の良い遺伝子導入を目標とした高分子ナノ・ミセル型非ウイルスベクターの作成に取り組んだ。具体的には、(1)ミセル表面に対して標的指向ペプチドを付加することによる効率改善と、(2)エンドソームに取り込まれた後の細胞質への遺伝子リリース(エンドソーム・エスケープ)効率の向上を目指した分子設計の改変の二つに関して検討した。(1)標的ペプチド付加H17年度の研究で、RGDペプチドを付加したミセルを作成しラビット頚動脈障害モデルにおいて検討したところ、有意な遺伝子導入効率の改善が認められなかったため、本年度はartery wall binding peptideを表面に結合したミセルを作成して検討した。しかし、in vitroにおいて血管平滑筋細胞や血管内皮細胞に対しての取り込み効率を検討したところ、有意な改善を認めることができなかった。そのため、RGDペプチドを環状に配することにより細胞への接着性を高めた環状RGDペプチドをミセル表面に付加して同様の検討を実施したこところ、in vitroにおいて有意な遺伝子導入効率の上昇を認めた。現在、in vivoにおける環状RGDの効果を検討中である。(2)エンドソーム・エスケープ能を高めたミセルの効果エンドソーム・エスケープ能を高めたミセルとしてPEG-DETを開発し、血管平滑筋細胞や血管内皮細胞によるin vitro検討において優れた遺伝子導入効果を確認することができたため、本年度はラビット頚動脈障害モデルを用いたin vivo検討を実施した。そうしたところ、in vivoにおいては、従来の高分子ナノ・ミセルやポリエチレンイミンのようなポリイオン・コンプレックスによる遺伝子ベクターと比較して有意な導入効率の上昇を認めることができなかった。しかし、血管壁細胞に対する毒性は明らかに少なく、また血栓形成作用もほとんど認められなかった。そのため、PEG-DETは血管壁への遺伝子導入手段としての有効性があることが示唆された。
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Gene Therapy (In press)
Journal of Vascular and Endovascular Surgery 33
ページ: 325-329
Journal of Vascular Surgery 43
ページ: 592-600