研究概要 |
我が国3例目、本院2例目となる、合併症のない1型糖尿病に対する生体単独部分膵臓移植を実施した。手術方法は、1例目では我が国で生体膵臓移植では最初となる膵液の腸管ドレナージを施行した。2例目では世界発となる同所性生体単独膵臓移植を施行した。膵液漏の合併症無く退院している。また本研究のテーマである。生体膵臓移植の新しい免疫抑制療法として、我々が生体肝移植で行っていると同様に、ドナーよりの分離白血球を定期的に門脈内に投与した。術後アミラーゼやリパーゼの上昇もなく、今のところ拒絶反応は起きていない。術後の免疫学的解析では、サイトカイン産生ではIL-10が1週間目で高値となっており、IL-2,IFNrは完全に抑制されていた。またフローサイトメトリークロスマッチ解析では、やはりCD3+IgMが1週間をピークに抑制されており、Th-2タイプが活性化しており、生体肝移植と同様の結果がでている。混合リンパ球反応でもドナー特異的寛容状態に傾いてきている事が確認されている。実際の免疫抑制療法では、FK506とMMFの2剤による維持療法で、我が国発のステロイドフリーレジメで拒絶反応もなく経過しており、我々の新しい免疫抑制療法は、生体膵臓移植にとって有効な方法と成る可能性が示唆された。本研究を基礎として今後臨床症例を重ねるとともに、臨床的、基礎的解析を進め世界に発信していきたい。
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