研究課題/領域番号 |
17390349
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上本 伸二 京都大学, 医学研究科, 教授 (40252449)
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研究分担者 |
白石 泰三 三重大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30162762)
長浜 真人 鈴鹿医療科学大学, 医用工学部臨床工学科, 教授 (50198355)
田端 正己 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (90291418)
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キーワード | 生体肝移植 / 過小グラフト / 門脈血行動態 / 肝再生 / 肝再生因子 |
研究概要 |
ブタを用いた部分肝移植を行い、至適な肝再生を得るための門脈圧と門脈血流量のバランスについて検討した。30%の部分肝を同所性に移植し、門脈・下大静脈シャントを作成しない群(NS群)、大きなシャント群(LS群:シャント直径10mm)、小さなシャント群(HS群:直径5mm)の3群に分け、生存率、移植肝の各種パラメーター、および小腸粘膜の組織像を比較した。閉腹前の門脈血流量(ml/min)/門脈圧(mmHg)は、NS群、HS群、LS群でそれぞれ772/18.4、411/12.0、645/13.7であった。術後7日目の生存率はそれぞれ、83%、0%、83%であった。NS群とLS群で移植後7日目の肝組織を比較すると、肝細胞の壊死、バルーニング、脂肪沈着すべてにおいてNS群で悪化していた。また、7日目の小腸粘膜もNS群で明らかに障害が進行していた。以上のデータは、昨年度の臨床研究で得られた新しい知見、すなわち生体肝移植後の肝再生は門脈圧と門脈血流の微妙なバランスの上に成立しているという仮説を客観的に支持するものであり、さらに過度な門脈圧は移植肝のみならず小腸粘膜にも障害をおよぼすことが証明され、生体肝移植の臨床応用に大いに貢献するデータであると考える。 次にラットを用いた肝切除モデルで、肝臓周囲の臓器の肝再生促進因子の遺伝子発現状況を観察した。肝臓以外の小腸と脾臓で、肝切除によりVEGF、HGF、およびHGFAのmRNA発現が亢進していることを見いだし、良好な肝再生を得るためには小腸を含む肝臓周囲の環境も重要であることを示唆した。 生体肝移植臨床においては、上記の動物実験からの成果を駆使し、門脈圧と門脈血流量のバランスをとることを心がけ、昨年度1年間にグラフト/レシピエント体重比が0.8%未満(0.57-0.79、平均0.72)のsmall-for-sizeグラフトの移植を13例に行ったが、生存率85%の良好な成績を達成した。
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