研究課題
基盤研究(B)
ブタを用いた肝切除ならびに部分肝移植の実験においては、適切なサイズの門脈・下大静脈シャントを形成したグループでの肝再生が最も良好であり、門脈圧と門脈血流のバランスが重要であることが判明した。同時に、シャントを形成しないグループにおいては過度の門脈圧のために小腸粘膜に障害が生じていることが証明された。さらに、ラットを用いた肝切除モデルで肝臓周辺臓器からの肝再生促進因子の遺伝子発現状態を観察すると、小腸と脾臓でHGF,VEGF,HGFAのメッセンジャーRNA発現が亢進していることが確認され、良好な肝再生をえるためには肝臓だけでなく、周辺臓器の環境の設定が重要であることが確認された。一方で、生体肝移植の臨床においては、レトロスペクテイブ臨床研究で生体肝移植後の門脈圧が20mmHg未満であることが移植された部分肝の再生に重要であることが発見された。この成果をプロスペクテイブ臨床研究として発展させ、生体肝移植後の門脈圧を20mmHg未満にして、なおかつ十分な門脈血流を確保する(脾臓摘出、下腸間膜静脈・左腎静脈シャント作成、あるいは側副血行路の遮断を利用)ことによって、レシピエント生存率を90%以上に向上させた。研究代表者が平成18年度に京都大学に異動してからは、上記の三重大学での成果を京都大学での生体肝移植に応用し、平成18年度〜19年度のレシピエント生存率を90%以上に改善した。さらに、門脈圧を17mmHg未満までにコントロールしながら十分な門脈血流を維持することによって、過小グラフト(graft-recipient weight ratio;GRWRが0.8〜0.6)であっても良好なレシピエント生存率を達成できたことから、それまでのGRWRの安全下限であった0.8を0.7まで下方に設定し、できるだけドナーの負担の少ない左葉を使用する生体肝移植を推進している。
すべて 2007 2006 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
J Surg Research 143
ページ: 238-246
Transplantation 81
ページ: 373-378
Liver Transplant 11
ページ: 68-75