研究課題
基盤研究(B)
小腸は近年の免疫抑制剤、種々のモノクローナル抗体(OKT3,抗CD25抗体,抗IL2-R抗体など)や抗胸腺細胞グロブリンや抗リンパ球グロブリンなどの臨床導入により移植可能な臓器の1つになってきた。しかし他臓器に比べるとその成績はいまだ満足できるものでなく、2003年5月までに約1000例が国際登録されているが、1年生存率は70%、3年生存率が50%という現状である。本邦でも生体小腸移植が8例に行われているが、生存率は50%であり、まだ実験的治療の域をでておらず、本邦で治療として定着している肝臓移植に比べるとその成績は満足すべきものではない。その原因として小腸は粘膜固有層やバイエル板やリンパ節など、リンパ球や単球や樹状細胞などの免疫担当細胞の宝庫であり、疫原性が強く、拒絶反応やGVHDが起きやすいという問題がある。そのため強力な免疫抑制が必要となり、合併症としての感染症が起こりやすいということが挙げられる。これらの問題点を克服し小腸移植を短腸症候群の治療手段として定着させるには免疫寛容の誘導しか方法がない。この研究では血縁間の生体小腸移植をターゲットにして、実質臓器移植にとって斬新な方法である「ミニ移植(骨髄非破壊造血幹細胞移植)」という方法で造血幹細胞移植を行い、mixed chimeraからcomplete chimera状態を完成させ、ドナー特異的な免疫寛容状態にした状態で、造血幹細胞と同じドナーからの小腸移植を行い、免疫抑制剤なしで生着する方法を確立することが目的である。この研究では、まずミニブタの小腸移植の手技について検討した。家畜豚と比較して血管が細く硬いため、いままでの生体小腸移植の方法で、末梢の回結腸動脈の吻合ではグラフトの血行不良である。中枢側の太い血管を吻合に選ばないと生着は困難である。特に動脈系で顕著であり、動脈は上腸間膜動脈の根部か大動脈そのものを使う、いわゆる脳死小腸移植モデルを応用することで解決された。上腸間膜動脈の根部を吻合に用いてうまくいくようになった。次にミニブタの胸骨および腸骨より骨髄液の採取の手技を確立した。2箇所に骨髄穿刺針を留置し、生食で還流すると採取がうまくいき、ミニ移植に必要な1.0×10^8個/kgにあと一歩のところまできた。ミニブタの化学療法の耐用について現在、薬剤投与量をきめて実験を開始した段階である。SLA1ミスマッチのミニブタの組み合わせが、業者レベルでやっと完成したが1haprotypeミスマッチの組み合わせの作成は困難であり、実験のプロトコールにちょうどよいものは出来なかった。今後、業者との連携を密にして開発していく必要がある。
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