研究概要 |
ラット小型肝細胞に特異的に発現している膜貫通型蛋白質CD44の肝組織における小型肝細胞の局在を検討した。正常ラット肝臓小葉内にはCD44抗体に反応する肝細胞は存在しなかったが、ガラクトサミン(GalN)で劇症肝炎を誘導したラットでは、投与3日目より陽性小型肝細胞が門脈周囲に出現した。しかし7日目にはほとんど認められなくなった。GalN投与後4日目の肝臓よりCD44陽性細胞をソーティングし培養すると小型肝細胞のコロニーを形成し、肝細胞マーカー遺伝子の発現を認めた。GalN投与後2日目に多数出現するオーバル細胞をThy1.1抗体を用いてソーティングし培養すると、CD44陽性細胞は出現しなかったが、同様に投与3日目の肝臓から分離培養した細胞の一部からCD44陽性の小型肝細胞が出現しコロニーを形成した。オーバル細胞から小型肝細胞への分化を認めた(Kon, et al. J.Hepatology, 2006)。培養し細胞数を増やしたラット小型肝細胞の同種ラット脾臓・肝臓への移植を試みた。放射線照射と部分肝切除を行ったラット肝臓に脾臓経由で小型肝細胞を移植すると少数の細胞でも成熟肝細胞の時と同様の細胞置換が起こることを認めた(Shibata, et al. Liver Transplantation,2005)。 ポリカーボネート多孔性膜上でラット小型肝細胞を培養したものを2枚、細胞が接するように積層することにより、3次元積層類肝組織を構築させることに成功した。積層後、小型肝細胞のアルブミン分泌は増加し、1週間以上その機能を維持していた。また上下の細胞間に毛細胆管様構造が形成され、Fluorescein Diacetateの分泌も認めた(Sudo, et al. FASEB Journal,2005)。積層したことにより小型肝細胞は成熟化し、極性を持つようになったと考えられる。
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