研究概要 |
TGF-βは多くの細胞の増殖を抑制することから、癌抑制因子として知られている。一方で細胞外マトリックスの蓄積や血管新生、免疫抑制などを引き起こすことから、癌化を促進する因子としても注目されている。抑制型SmadであるSmad7および、そのユビキチンリガーゼであるSmurf1,Smurf2,Arkadiaの転写調節と蛋白発現調節を調べるため研究を計画し、以下の結果を得た。 (1)手術摘出標本から得られた検体(食道癌、胃癌、大腸癌、乳癌それぞれ50症例、原発性肝癌、転移性肝癌それぞれ20例)からRNAを抽出し、Real time RT-PCR法を用いてSmad7、Smurf1、Smurf2、ArkadiaのmRNA発現解析をおこない、発現の差異が認められた。 (2)Smad7,Smurf1,Smurf2,Arkadiaのプロモーターをクローニングし、ルシフェラーゼベクターおよびGFPベクターに組み込んだ。9×CAGAベクターおよびSmad7,Smurf1,Smurf2,Arkadiaのプロモーターが動作することを確認した。 (3)テトラサイクリン誘導型RNAiシステムの作製をおこなった。 大腸癌細胞株HCT116およびSW480にTetリプレッサー(TetR)を恒常的に発現させるベクターpcDNA6/TR(Promega)を導入しウエスタンブロット法にてTetRの発現を確認した。さらに、siRNA配列Smurf1(5'-AAGAACCUUGCAAAGAAAGA),Arkadia(5'-AAGUGGGGAAUGAAUUCUCUC)を含むTetオペレーターをもつ誘導型siRNAベクターpSUPERIOR(Oligo Engine)を遺伝子導入し、テトラサイクリン添加によるRNAi発現細胞株を作製した。 次年度は作製したベクターおよび細胞株を用い、詳細なプロモーター解析を行う予定である。
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