研究課題
本研究では現在補助人工心臓が抱えている様々な問題点を総合的に解決した2年間以上の安全な使用を可能とする次世代の補助人工心臓システムの開発と実用化をはかり、重症心疾患患者の救命・社会復帰の実現を目的とする。本年度は主に以下の点について検討を行った。(1)血液ポンプ血栓形成に大きく影響する血液ポンプ内の周縁部での洗い流し効果は人工弁の開口方向およびポートの開き角度に依存すると考えられる。そこで、流れの可視化手法であるPIV (particle image velocimetry)を用いたin vitroの灌流実験によって人工弁の開口する方向が血液ポンプ内での流速分布に及ぼす効果を検討した。検討結果から人工弁の開口する方向によって血液ポンプ内の低流速域での流速には2倍以上の差が生じ、血液ポンプ内への流入条件が流れの動態を制御する重要な因子であることが確かめられた。またポート角度が0、30、45および60度の血液ポンプの試作を行いポンプ内部の流れに関する検討を開始した。現在までに3頭の仔牛を用いた慢性動物実験を行ったところ、脱血管への血栓形成による流量低下、ダイアフラム破損例を認めたものの、ポート角度60度の血液ポンプにおいて64日間の長期生存記録(予定犠死)を得た。今後、血液ポンプ内部の可視化、慢性動物実験による検討を続け、より抗血栓性、耐久性に優れた血液ポンプの完成を目指す。(2)駆動装置ピストンエアーシリンダを用いた空気圧発生機構による小型駆動装置を試作し、仔牛を用いた慢性動物実験を行ったところ39日間の連続駆動が可能であった。実験期間中、拍動数は55〜70bpm、平均大動脈圧は88±13mmHg、平均バイパス流量は5.0±0.5L/minで維持され、平均消費電力は16±2Wであった。実験期間中、血液ポンプ内に血栓形成は認められず、動物の状態、循環動態も良好に保たれたが、脱血管皮膚貫通部に感染を認め、顕著な流量低下を認めたため犠死とした。駆動装置の動作トラブル等は認められなかった。今後、模擬循環回路による性能評価試験、慢性動物実験による検討をさらに続け、小型装着式駆動装置の性能向上と完成を目指す。
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第34回人工心臓と補助循環懇話会
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第44巻第45回日本生体医工学学会大会論文集 VoL44, Suppl.1
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