研究課題
正常肝のみならず脂肪肝の肝切除あるいは加齢肝切除といった種々のマウス疾患モデルに関して、肝再生の開始、維持、終止の分子機序を解析した。とくに、「細胞増殖」、「細胞成長」「アポトーシス」の面に着目し、これらの細胞機能に対してどのような細胞内シグナル・細胞間シグナルがはたらいており、細胞としてだけでなく臓器としての機能につながっているのかを研究・解明した。脂肪肝モデルに関しては、leptin受容体欠損のdb/dbマウスを用いて、加齢マウスには20月齢以上のマウスを用いて、70%肝切除を行った。分子機序の解析には、細胞増殖および細胞成長への関与が強く考えられる転写因子に着目し、それぞれSTAT3、PDK1の肝特異的ノックアウトマウスおよびそれらのダブルノックアウトマウスを作成し、30%および70%肝切除を行い、細胞内シグナル伝達機構を分子生物学的に解析した。また、必要に応じてアデノウィルスベクターによる種々の遺伝子導入により分子機能を制御し解析した。「細胞増殖」に関しては、mitotic index、 BrdUの取り込み、PCNAの発現、Cyclin-A/D/E、 CDKの活性化、実際の細胞分裂像の変化を定量的かつ経時的なダイナミズムを解析し、「細胞成長」に関しては、組織切片から、あるいは電子顕微鏡写真をもちいてサイズの測定を行なった。正常肝における肝再生には、STAT3を中心とする細胞増殖よりも、PDK1/Aktによる細胞成長が重要な役割を果たしており、これにより再生中の肝機能も保たれていることが判明した。マウス脂肪肝肝切除後肝再生は不良であったが、この原因は細胞内の細胞増殖関連因子であるWee1/Myt1の発現が低下することにより、Cdc2のリン酸化不全によるものと判明した。加齢マウス肝切除後肝再生モデルでも、肝再生は傷害されていたが、この場合も細胞増殖能は保たれており、むしろ切除後アポトーシスが誘導されることにより肝の再生が障害されていると考えられた。これらの研究成果は、今後肝臓外科における術後肝再生補助療法 (分子標的治療) にむけた道筋をつけるものと考えている。
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