研究課題
本研究は血小板による肝細胞増殖作用に着目し、血小板を用いた全く新しい肝再生促進療法、ならびに肝不全治療法の開発を行うことを目的としている。これまでにマウス肝切除モデルを用いた実験系で、血小板を増加させることにより肝切除後の肝再生が促進されることを明らかにした。さらに過大肝切除モデルにおいて、血小板を増加させる生存率の有意な改善が認められた。またin vitroの解析で、血小板内に血小板由来増殖因子PDGF、肝細胞増殖因子HGF、インスリン様増殖因子IGF-1が含まれており、HGFおよびIGF-1がPI3K/Aktのシグナル伝達系を活性化して肝細胞増殖を促進するメカニズムが考えられた。平成19年度の検討では血小板の肝硬変に対する治療効果を検討した。マウス肝硬変モデルを用いて血小板増加群と血小板正常群の肝線維化の程度を比較した。血小板正常群では著明な肝線維化を引き起こすのに対し、血小板増加群では線維化が抑制された。また、血小板が肝線維化を抑制させるメカニズムとして線維化を引き起こす星細胞を活性化させるTGF-betaを抑制し、線維を溶解するMMP-9を増加させることが考えられた。次にラット肝硬変モデルを用いて肝切除後の肝再生を評価した。肝硬変群では肝再生が低下するのに対し、肝硬変群の血小板を増加させると肝再生が促進された。このことから血小板製剤の投与は肝硬変の抗線維化と肝再生に有効な治療法であることが示唆された。今後は血小板製剤を用いた肝疾患治療法の実用化を目指して、臨床研究を行っていく予定である。
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