研究課題
基盤研究(B)
本研究は血小板による肝細胞増殖作用に着目し、血小板を用いた全く新しい肝再生促進療法、ならびに肝不全治療法の開発を行うことを目的としている。平成17年度はマウス肝切除モデルを用いて血小板を増加させることにより肝切除後の再生が促進されることを明らかにした。また培養肝細胞と血小板を用いた実験系で、血小板内容に肝細胞増殖促進効果があり、シグナル伝達系としてPI3K/Akt経路が重要であることを明らかにした。平成18年度はマウス過大肝切除モデルを用いて血小板増加群と血小板正常群の肝再生を比較した。血小板正常群に対し血小板増加群では肝再生が促進され、生存率の有意な改善を認めた。血小板内に血小板由来増殖因子PDGF、肝細胞増殖因子HGF、インスリン様増殖因子IGF-1が含まれており、HGFとIGF-1が肝再生に重要であることを明らかにした。また長期保存可能な凍結乾燥血小板製剤の開発をマウス血小板を用いて行った。凍結乾燥血小板は形態や生理活性物質がほぼ新鮮血小板と同様に保たれ、肝細胞増殖促進効果を有していることを確認した。平成19年度の検討では血小板の肝硬変に対する治療効果を検討した。マウス肝硬変モデルを用いて血小板増加群と血小板正常群の肝線維化の程度を比較した。血小板正常群では著明な肝線維化を引き起こすのに対し、血小板増加群では線維化が抑制された。また血小板が肝線維化を抑制させるメカニズムとして、線維化を引き起こす星細胞を活性化させるTGF-betaを抑制し、線維を溶解するMMP-9を増加させることが考えられた。次にラット肝硬変モデルを用いて肝切除後の再生を検討し、肝硬変状態でも血小板に肝再生促進効果が認められた。このことから血小板は肝硬変の抗線維化と再生に有効な治療法であることが示唆された。今後は血小板製剤を用いた肝疾患治療法の実用化を目指して、臨床研究を行っていく予定である。
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