本研究は肝幹細胞の肝内局在部位を同定し肝再生のメカニズムの解明を目的にしている。本年度の目標は1.肝幹細胞のクローニング、2.肝幹細胞のモノクローナル抗体の作成、3.肝幹細胞の局在の同定、4.肝幹細胞の機能細胞への分化転換、5.肝幹細胞によるオルガノイドの作成であった。1では1wellに1個の細胞に単離すると、細胞は数回分裂するが細胞巣を形成するまでに至らなかった。しかし、ポリエチレンイミンでコーティングした大型プレートで培養を続けると目的細胞を残して他の細胞が浮上することが判明したので現在、この方法でクローニングを行っている。2は未施行。3は本細胞の抗体作成に換えてGFP遺伝子を組み込んだウイルスベクターを作成し、GFPをこの細胞に導入することを試みたところGFPを発現する細胞を増殖させることが出来た。GFP発現細胞をクローニングして、これをラット門脈に注入し定着する部位を検索している。4では肝上皮性幹様細胞にVEGF(vascular endothelial growth factor)のリセプターであるFlk-1が強発現していることを免疫染色により確認したので、5000/plateの細胞数で以下の6種類のメディウムで培養VEGF効果を検討した。1.DMEMのみ、2.DMEM+VEGF、3.DMEM+FBS、4.DMEM+FBS+VEGF、5.DMEM+FBS+EGF、6.DMEM+FBS+EGF+VEGF。その結果、DMEM+VEGFで培養した細胞から樹枝状の血管様構造が形成され管腔構造も認められた。しかし、他のメディウムでは全て扁平な細胞巣が形成された。VEGFにより血管様構造が誘導されたことはこの細胞に対し適当な他の増殖因子を共作用させることにより血管構築を伴った人工肝臓作成の可能性が示唆された。5では本細胞を浮遊状態で増殖させ、細胞集団を形成させることができた。
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