研究概要 |
本研究はラットの肝上皮性幹様細胞の肝内局在部位を同定し肝再生のメカニズムの解明を目的にしている。本年度の目標は1.本細胞のクローニング、2.本細胞の性格づけ、3.本細胞の増殖因子受容体の検討、4.本細胞の機能細胞への分化転換の試み、5.本細胞によるオルガノイドの作成であった。1では1wellに1個の細胞を分裂増殖させクローナルな細胞を継代培養することが出来た。2では一般に幹細胞因子とされているマーカーの発現はCD117(Anti-c-kit)(-),CD45R(Anti-Lineage marker)(+++),CD90(Anti-Thy 1)(+/low),Anti-CD34(low/-)であった。一般的には幹細胞にはCD117(+),CD45R(-)とされているので乖離が認められた。3ではFlk-1(Anti-VEGF R)(+++),c-Met(Anti-HGF R)(+++),Bek(c-17)(Anti FGF R)(+++),Anti-EGF R(++),Anti-c-kit(Receptor of stem cell factor)(-)であった。また、Actin(+++)、マクロファージマーカーED2(+++)、PECOM-1(+++)、F-VIII因子、CK7/17は(+/-)、AFP, Albumin, PASは(+)であった。4ではVEGF添加による細い糸状の構造の形成、HGF添加による大きな網状構造の形成が認められた。EGFやFGFの添加では形態の変化は認められなかったが増殖能、生存能が増強された。5では本細胞と内皮細胞の混合細胞液を70%肝切除ラットの腹壁皮下に注入するとこの細胞は皮下脂肪細胞内に浸潤し定着して細胞塊(PAS+,AFP+/low)を形成した。上記から本細胞は分化した血球系細胞と内皮細胞の性格を持ち増殖因子により形態変化を来す細胞であることが認められた。
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