研究概要 |
研究実施計画に沿い、本年度は(A)実践応用に資する全自動解析型簡易効果予測システムの開発、と(B)さらに高度の予測性を有する原発巣別治療効果予測モデルの確立、を試みた。 得られた成果:(A)発現アレイを用いることの限界が明らかとなり、アレイ以外の発現解析系による予測システムの開発を開始した。(B)食道がんを対象として網羅的解析などによる遺伝子発現情報と抗がん剤感受性に関わる臨床情報とを収集、予定より早く、多数の効果関連遺伝子群の発現情報を基に治療効果を定量的に予測する数式(モデル)の設定に至るとともに(Int.J.Oncol.印刷中)、策定された新規指標候補遺伝子群の機能証明実験を開始した。胃がんにおけるTXL/S-1のPhase I(Oncology),TXT/S-1のPhase II(Clin.Cancer Res.印刷中),大腸がんにおけるCPT-11のphase II(米国癌治療学会発表予定,論文投稿準備中)を終了し、臨床研究成果の公表(あるいは公表予定)とともに,それらの治療効果予測モデルの開発を推し進めた。これらの研究は効果のみでなく有害事象の規定因子にも広がり、CPT-11の有害事象に関連するcarboxyl esteraseやUGT1A1の新たな遺伝子型なども見出している(論文投稿準備中)。さらに、本研究で得られたノウハウは、他癌種での効果予測系や予後予測系の開発研究にも貢献している(卵巣がん,Mol.Cancer Ther.)(肺がん,Cancer Res.)。派生、付随した研究の成果も含め、テイラード化学療法の進歩に貢献しうる十分な成果が得られた、あるいは得られつつあるものと考える。
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