研究分担者 |
愛甲 孝 鹿児島大学, 理事 (60117471)
高尾 尊身 鹿児島大学, フロンティアサイエンス研究推進センター, 教授 (80171411)
栄鶴 義人 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (00041351)
北薗 正樹 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (30398276)
喜島 祐子 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (60381175)
|
研究概要 |
消化器癌ではリンパ節転移の有無は予後の重要な因子である.申請者らは免疫組織学的方法やRT-PCR法を用いることにより,通常の組織検査では発見されないリンパ節微小転移の臨床的意義を報告してきた.形態学的に観察すると,clusterを形成する転移巣とsingle cellの転移巣がみられたが,これらが着床・増大するのか明らかにされていない.近年,原発巣からのリンパ流を最初に受けるリンパ節であるsentinel node(SN)の概念が消化器癌でも導入されている.食道癌や胃癌の早期の段階では転移のほとんどはSNに認められ,微小転移の存在もみられた.一方,転移の形成に重要であるリンパ管侵襲をリンパ管特異抗体であるD2-40で検討すると,リンパ管侵襲陽性例に有意に微小転移例が多く認められた.リンパ管侵襲を詳細に調べることは微小転移の予測になると考えられた。また,微小転移の特性に関してKi-67抗体を用いて細胞増殖活性を検討した.転移巣が0.2mm以上の90%に,0.2mm以下の29%にKi-67発現が認められた.この結果から微小転移巣は増殖能力を有しており,臨床的にも治療対象として考慮すべきと考えられた.リンパ節転移や微小転移例ではchemokhleの一つであるCXCL12の発現と血管新生が認められた.術前放射線治療例は手術単独例と比べ,リンパ節の微小転移頻度が有意に低下していた.とくに術前放射線治療例ではsingle cellは認められず,治療効果が認められた.しかし,原発巣の非奏効例ではclusterを形成する微小転移が残存しており,今後の治療の検討課題と考えられた.今研究で得られた知見は消化器癌のリンパ節転移の実態の解明とともに今後の治療のあり方に示唆を与えるものとして有用であると考えられた.
|