研究課題
基盤研究(B)
(目的)強力な血管新生阻害作用を有するHGFアンタゴニストであるNK4とVEGF受容体の抑制因子であるsFlt-1を用いて、肝再生に対する抑制的な効果についての検討を行なっている。(方法と結果)NK4遺伝子あるいはsFlt-1遺伝子をアデノウィルスベクターを用いマウスに遺伝子導入し、48時間後に70%部分肝切除術を施行した。対照としてLacZ遺伝子を用いた。まず、遺伝子導入後のNK4蛋白及びsFlt-1蛋白の発現をELISAにて確認したところ48時間でピークを示し、血清中での発現は約2週間持続した。NK4の血中濃度のピークは約300ng/ml、sFlt-1の血中濃度のピークは約350ng/mlであった。肝切除後、12,24,36,48,72,120時間後に組織学検討を行ったところ、NK4導入群では肝切除後の36時間においてBrdU陽性細胞数の減少及び48時間においてマイトーシスの細胞数の減少がみられCD31抗体による免疫染色においてNK4導入群では、類洞内皮細胞の増殖が抑制されていた。また、肝重量の計測においてもNK4導入群はコントロール群に比べて、肝重量の増加が遅延していた。sFlt-1導入群では、BrdU陽性細胞数及びマイトーシス細胞数は減少傾向にあるものの有意差は認めなかった。また、血管構造の安定化・不安定化に関わり血管の成熟過程において重要な役割があると考えられているAng-1,Ang-2,Tie-1,Tie-2のmRNA発現をRealtimeRT-PCRにて測定したところ、肝切除後3〜4日においてAng-2,Tie-1,Tie-2の発現がNK4群において抑制されていた。(考察)肝再生は、血管新生に随伴する現象であり、血管成熟に必要なシグナルを抑制することにより、血管新生が抑制され、その結果肝再生が遅延したと考えられた。
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