酵素テロメラーゼの構成分子であるhTERT遺伝子のプロモーターに、アデノウイルスの増殖に必要なE1A、E1B遺伝子をIRESで結んだ配列を結合し、アデノウイルス増殖カセットhTERTp-E1A-IRES-E1Bを構築した。さらに、オワンクラゲ由来のGFP遺伝子をサイトメガロウイルス(CMV)・プロモーターの下流に連結し、GFP発現カセットCMVp-GFPを構築した。これらのカセットをE1、E3遺伝子を欠損したアデノウイルス・ゲノムに組み込み、癌細胞で選択的に増殖し、GFP蛍光を発現するOBP-401ウイルス製剤を作成した。まず、ヒト非小細胞肺癌細胞株H1299およびヒト正常肺線維芽細胞NHLFにOBP-401を感染させ、H1299では72時間をピークにGFP蛍光が検出できること、NHLFではGFP蛍光はほとんど観察されないことを確認した。OBP-401のE1A遺伝子に対するプライマーを用いてリアルタイムPCR解析を行ったところ、H1299細胞内ではOBP-401は10e5〜10e6倍に増殖していたが、NHLF細胞内では10e3程度の増殖に抑えられていた。また、カラーチルド3CCDカメラ、データ処理用パソコン、画像解析ソフト、さらにマクロ観察用キセノン光源などを組み合わせ、蛍光マクロ像観察システムを準備した。ヌードマウス背部皮下ににH1299細胞を移植し、形成された肉眼的皮下腫瘍にOBP-401を局所注入した。観察システムにより、OBP-401投与後1日目から腫瘍で蛍光が検出でき、3週間目に摘出した腫瘍では、その割面のほぼ全域でGFP発現が確認できた。一方、腫瘍を持たないヌードマウスの皮下にOBP-401を投与してもGFP蛍光は認められず、in vivoでも正常組織ではOBP-401が増殖しないことが明らかとなった。さらに、胸膜播種モデルにおいて、微小播種巣が検出可能であるかどうかを検討していく。
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