研究課題
BSEいわゆる狂牛病の問題が人工血管にも大きな影響を及ぼすことを予測して、我々は1999年から病原性蛋白を含まない被覆人工血管の研究として、被覆物質の切り替えと、被覆に合わせた人工血管基材の改良を行ってきた。その結果、厚いCoatingよりも少量のImpregnationの方が漏血阻止に効果があることを見い出すと同時に、超極細ポリエステル繊維製人工血管がそのための基材として最適であることを明らかにし、これらの成果から以下に示す被覆型人工血管の設計指針を得た。1.生物由来物質は使用せず、合成の生分解性物質を使用する。2.被覆物質は極力少量にする。3.コラーゲンのような親水性物質は疎水性であるポリエステル繊維の間隙にしみ込まないため厚い被覆(Coating)が必須となっているで、その欠点改善のためコラーゲンを使用せず、少量の疎水性物質を繊維間隙へしみ込ませ(Impregnation)、撥水効果で漏血阻止を得る。4.基材としては、低有孔性でありながら柔軟な超極細繊維製人工血管を使用する。グルタールアルデヒドやホルムアルデヒド等の架橋剤は細胞毒性が強いので使用しない本指針に基づき、以下の工夫を行った。すなわち世界中の研究者はコラーゲンなどの親水性物質を疎水性であるポリエステル繊維間隙に入れようとしたが、入らないので表面を厚く被覆(Coating)した。我々は疎水性物質を有機溶媒に溶解させ毛細管現象によって狭い繊維間隙に効率よく浸透させることに成功した。これによってCoatingではなく、Impregnationによる漏血の阻止に成功し、被覆物質の総量を10分の1に減少させた。以上の準備の結果、使用する疎水性合成高分子材料の種類、溶解方法、乾燥方法、溶媒の細胞毒性、生体内吸収挙動、等の解明すべき課題を引き出した。本研究ではこれの課題を中心に理想的な被覆人工血管を設計した。
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The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery (In press)
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