研究概要 |
平成17年度は神経膠芽腫新集学的治療の基盤解析を行い、Aktを標的とする集学的治療の理論的背景の樹立とカルシウム透過性AMPA受容体を介するシグナル伝達機構の細胞間ネットワークの解明を目的とした。前年度のAkt脱リン酸化・新集学的治療の基盤解析に基づいて平成18年度はnude miceによる前臨床試験を行い臨床応用する際の最適なmodalityの特定を行った。前臨床試験に使用する疾患モデルは研究代表者が独自に樹立したCGNH-89を用いた。 皮下移植モデル腫瘍による前臨床試験解析結果 Control群、AMPA antagonist投与群、PDGFR/c-kit拮抗薬投与群、AMPA antagonist plus PDGFR/c-kit拮抗薬投与群、CDDP投与群、AMPA-antagonist plus CDDP併用群の6群にて行い、おのおの腫瘍径を算定し腫瘍増殖に対する抑制効果を判定した。それぞれ6群の腫瘍のおよび全身臓器も標本作製し病理学的解析した。AMPA antagonist投与群(YM872およびGYKI52466),PDGFR/c-kit拮抗薬投与群,CDDP投与群とも未治療群と比較して有意に増殖抑制効果を認めた(p<0.05)。AMPA antagonist plus PDGFR/c-kit拮抗薬投与群ではAMPA antagonist投与単独群と比較して有意な相乗効果は認めなかった。AMPA-antagonist plus CDDP併用群ではCDDP単独投与群に比較して有意な相乗効果を認めた。CDDP投与群において有意な体重減少を認めた。病理学的にはAMPA antagonist投与単独群、PDGFR/c-kit拮抗薬投与群、AMPA antagonist plus PDGFR/c-kit拮抗薬投与群において有意な血管新生抑制を認めた(p<0.001)。これらの治療群において全身臓器に著変は認めなかった。 脳内移植モデル腫瘍による前臨床試験解析結果 control群、AMPA antagonist投与群のみ試行した。各群10匹で行いcontrol群では30日以内に全例死亡したがAMPA antagonist投与群では60日以上半数が生存し、病理学的にもapoptosisの増強とMIB-1indexの低下を認め腫瘍抑制効果が認められた。 以上よりAktの脱リン酸化を目的とする集学的治療の理論的背景を確立しAMPA antagonist単独投与群においては皮下移植モデル、脳内移植モデルとも腫瘍抑制効果を認め臨床試験へ進む基盤的データを取得できた。
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