研究概要 |
パーキンソン病に対する細胞移植療法を視野に入れて、ヒト胚性幹細胞(embryonic stem cell ; ES細胞)からドーパミン産生神経を誘導する報告が相次いでいる。細胞株によって増殖スピードや分化傾向に差がみられるようであるが、我々は京都大学で樹立されたヒトES細胞(KhES-1)を用いてドーパミン産生神経の誘導を行った。 KhES-1細胞は、フィーダー細胞(MEF)上でほぼ単層の扁平かつ密集したコロニーを形成。ES細胞のマーカーであるSSEA-4,0ct-4,TRA1-60,TRA1-81を発現していた。コーティングをしていないディッシュでfloating cultureを行うと、neurosphere様の形態をとり、約4週間後には大多数の細胞がNestin, Musashi-1, NCAMといった神経幹細胞あるいは神経系細胞のマーカーに陽性となった。ついで、この細胞をポリオルニチン・ラミニンコート上で2週間培養すると、Tuj1陽性の神経細胞が出現した。さらにTH、AADC陽性のドーパミン産生神経と思われる細胞も認められた。これらドーパミン産生神経は、sphere cultureの時期に培養培地にPA6細胞のconditioned mediumを加えることによって有意に増加した。 ヒトES細胞からもドーパミン産生神経が誘導可能であると思われる。次は、パーキンソン病モデルサルに移植して、神経機能に対する影響を検討する。
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