研究概要 |
当研究者は、これまでに脳虚血におけるオンコジーン、ストレス蛋白、アポトーシス関連遺伝子の発現と神経細胞の生死への関与の可能性を証明し、神経細胞神経成長因子(FGF)、免疫抑制剤(FK-506)、PARP抑制剤(3 amino-benzamide)による虚血脳保護作用を報告してきた。近年MAPK superfamilyが真核細胞のストレスならびにアポトーシスのシグナル伝達に重要な役割を果たしていることがわかり、培養神経細胞のグルタミン酸毒性によるアポトーシスにおけるp38の関与が報告された。当研究者はジャービル海馬遅発性神経細胞死モデルにおいてのみならずジャービル海馬虚血耐性モデルにおいても、p38の活性化が重要であることを証明し(J Neurosci 20:4506-4514,2000;J Cereb Blood Flow Metab 23:1052-1059,2003)、MAPK cascadeによる神経細胞の生死の制御の可能性を示した。本研究では、これまでの成果を発展させ、虚血性神経細胞の生死におけるp38、JNKなどの活性とそれらを制御する因子の活性変化を分子レベルで解明した。実験動物として、ジャービルを用い、一過性前脳虚血は自発呼吸のもと、一側総頚動脈一時的遮断により作製した。同モデルでMAPK superfamilyのうち、活性型ERK、JNK、p38、活性型phosphatases(MKPs)、scaffold proteinsの時間的、空間的発現変化immunohistochemistry, Western blottingにより検討した。また、各燐酸化酵素の阻害剤(PD98059,SB203580,UO126,D-JNKI1など)を全身または脳室内・組織内投与し、神経細胞の生死、虚血耐性に対する効果を検討した。
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