研究概要 |
ラット及びマウスに実験的脳動脈瘤を誘発し、脳動脈瘤発生増大の分子メカニズムを検討した。 免疫組織染色及びRT-PCRにおいて、IL-1βは脳動脈瘤初期病変の中膜平滑筋細胞を中心に発現が亢進していた。IL-1βノックアウトマウスでは、進行したadvanced stageの脳動脈瘤の頻度は有意に減少し、脳動脈瘤壁でのアポトーシス細胞の数も減少していた。このことより、IL-1βが脳動脈瘤増大過程に平滑筋細胞のアポトーシスを誘導することにより関与することが示唆された。 ラット実験的脳動脈瘤モデルにおいて、MMP-2、MMP-9の発現が経時的に増加することを免疫組織染色及びRT-PCRで確認した。脳動脈瘤初期病変ではマクロファージを中心とした炎症細胞の集積がみられ、脳動脈瘤壁に浸潤したマクロファージが主にMMP-2、MMP-9を発現していた。MMP-2、9に特異的な阻害薬であるTolylsamを投与すると、脳動脈瘤進行病変の割合は有意に低下した。以上より、MMP-2,-9は脳動脈瘤壁に集積するマクロファージにより分泌され、脳動脈瘤の増大を促進させることが明らかになった。 MMPの内因性の阻害物質であるTIMP-1,-2は、脳動脈瘤形成の早期病変では発現が上昇するが、晩期では発現がそれほど上昇せずに、MMP/TIMP比が脳動脈瘤進行病変では上昇することが定量的PCRで明らかとなった。また、TIMP-1、TIMP-2それぞれのノックアウトマウスでは脳動脈瘤の増大が促進されており、TIMP-1,-2がMMP活性を阻害することにより、脳動脈瘤形成に対し抑制的に働くこと、脳動脈瘤形成過程においてMMP/TIMPの不均衡が生じることにより、脳動脈瘤増大が促進されることが証明された。 また、家族性脳動脈瘤29家系を用いた連鎖解析を行い、TNF receptor super family 13Bは脳動脈瘤の感受性遺伝子であることが示された。
|