研究概要 |
本年度は,インスリンの標的細胞株であるH4(ラット肝細胞癌由来細胞株),C2C12(マウス筋原細胞由来細胞株),およびMC3T3-E1(マウス骨芽細胞株)においてklothoシグナルとインスリンシグナルの相互作用メカニズムの検討を行なった。 まず,それぞれの培養系においてklothoのgain-of-functionのインスリンシグナル経路に対する作用を,Klotho蛋白添加培養系およびKlothoアデノウイルス感染培養系において検討した。予め精製したKlotho蛋白存在下で培養した細胞を,インスリン,IGF-Iで刺激し,IRS, AKT, MAPKなどインスリンシグナルに関与する因子のリン酸化をwestern blotting, kinase assayによって評価したところ,H4およびC2C12細胞ではこれらのシグナルはklothoのgain-of-functionによって抑制されたが,MC3T3-E1細胞では変化がなかった。また,同様にklothoのloss-of-functionのインスリンシグナル経路に対する作用を,RNAi(interference)を用いてklothoに対する発現阻害を行い,インスリン, lGF-I刺激下でインスリンシグナルに関与する因子のリン酸化,klothoシグナルの有無がインスリン受容体の自己リン酸化に及ぼす影響を検討したところ,H4およびC2C12細胞ではこれらのシグナルは促進されたが,MC3T3-E1細胞では変化がなかった。 以上より,昨年までのinvivoのKL-KOとIRS-KOのダブルKOマウスの解析で見られた通り,klothoによる骨量維持作用はinsulinとは異なるシグナルを介することがin vitroの培養系でも示された。
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