前年度までの高密度分化誘導間葉系細胞の投与実験結果に基づいて、軟骨欠損・変性モデル動物を用いてのin vivo関節軟骨fabrication実験を続行した。その結果、既に得た短期的な軟骨表層修復に加えて、さらに長期にわたる関節修復効果とその維持が認められた。また移植細胞の一部は軟骨欠損部内に取り込まれて表層では軟骨に分化した。トレーサーシグナルの経時的減弱のため移植細胞の長期運命は不明ではあるものの、再生関節軟骨は6ケ月以降も良好に維持された。一方、移注細胞は軟骨欠損部のみならず関節軟骨変性部(fibrillation部)にも取り込まれて錨着しマトリックス産生をしていた。これらの結果から、間葉系幹細胞や未分化なchondrocytic cellではなく、分化誘導をかけて既に軟骨マトリックス産生を開始したstageの軟骨細胞が、関節内移注による関節軟骨fabricationには必要であることが明らかとなった。一方、投与細胞が長期経過で肥大軟骨細胞化しない制御方法を見出するために、肥大化抑制因子としてGas6を分離し、そのノックダウンと過剰発現により軟骨細胞の肥大化がそれぞれ正負に制御されることを示した。変性関節軟骨におけるGas6とその受容体の発現を示し、さらにGas6の関節軟骨維持における機能解析と治療ターゲットとしての評価のために、 Gas6を前肥大軟骨細胞で発現させるTgマウスも合わせて作成を開始している。
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