研究概要 |
間葉系細胞分化制御に関る因子として,BMPシグナルに関るsplicing factor 3b subunit 4,さらにgrowth arrest-specific 6を初めて明らかにし,これらの作用メカニズムを解析した.続いてBMPで分化誘導をかけた未分化間葉系細胞の変性軟骨に対する接着性をin vitroで検討した.chondrogenic lineageにまで誘導し蛍光ラベルした細胞を種々の変性度の器官培養関節軟骨表層に播種し,接着,分化,マトリックス産生を解析した結果,細胞は変性を伴う軟骨表層に接着し,一部は表層マトリックス内へ錨着・埋入することを明らかにした.さらにin vivoでの間葉系細胞supplementationによる生物学的関節修復の検討を行った.N1511細胞を用い,軟骨への複数の分化段階に制御した後,ラット膝関節に作成した軟骨欠損に対し、高密度1×10^7cell/mlに調整して関節内移注した。投与細胞の追跡では多数の細胞はまず関節滑膜表層に接着し,その後次第に滑膜下に埋入し,炎症の惹起や軟骨・骨化成を示すことなく消失.一方,細胞は軟骨欠損部にも接着・埋入し,ドナーの骨軟骨欠損部の骨髄由来間葉系細胞とともに,欠損部修復組織を形成した.修復組織は18週までの観察で部分的に軟骨分化し,硝子軟骨形成も認めた.投与細胞は投与時の分化程度にかかわらず同様の挙動を示したが,18週の時点では一定の分化誘導のN1511細胞の方がより多く欠損部内に残存していた.また軟骨修復程度も低分化の間葉系細胞移注に比べて有意に良好であった.投与細胞は軟骨表層変性部位にも好んで接着・錨着した.関節内高密度細胞投与において,一定段階の分化形質を有する細胞による関節内cell supplementationが軟骨修復促進に応用できる可能性を初めて示した.
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