研究概要 |
本年度,日本白色家兎から単離した関節軟骨初代培養細胞に対してグルタミン(Gln)を投与し,43℃の熱ストレス負荷を行った.対照としてGlnを添加しない細胞を用いた,熱ストレス負荷後4時間でタンパクを抽出し,HSP70の誘導をウエスタンブロッティング法で確認した.細胞活性をLDH assayおよびtetrazolium salt-based assayで検討した. 熱ストレス非存在下では,全ての細胞でHSP70の発現を認めなかった.熱ストレス負荷後のHSP70発現はGlnを添加した細胞で濃度依存的に増強した.熱ストレス負荷の細胞活性は対照細胞と比べてGlnを添加した細胞で有意に高かった. また,培養軟骨細胞に対して同様にGlnを投与し,0.5mMのsodium nitroprusside(SNP)によるアポトーシス誘導を行った.SNP添加後の細胞活性は対照細胞と比べてGlnを添加した細胞で有意に高かった.ヘキスト33342染色およびTUNEL染色によるアポトーシス陽性細胞の割合は,対照群と比べてGlnを添加した群で有意に少なかった. これら2つの結果より,Glnは熱ストレスおよびSNPによるアポトーシスから軟骨細胞を保護することが明らかとなった.この軟骨保護作用はHSP70発現を介している可能性が示唆された 以上の研究結果は,Glnがさまざまなストレスから軟骨細胞を保護し,進行する軟骨変性を抑制する可能性があることを示しており,変形性関節症の治療を考える上で重要である.
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