本研究課題では、多種多様の因子群が関わる非常に複雑なシステムである癌の骨転移に関わるTGF-β/BMPシグナル伝達系を統合的に理解し、治療法を開発するために必要な基礎的知見を得ることを目的として、1)乳腺に移植して骨に高率に転移する自然転移モデルの開発、2)TGF-β/BMPシグナルを中心とした癌の骨転移の分子機構の全休像の描出、3)TGF-β/BMPシグナル阻害剤とシグナル抑制因子遺伝子導入の治療への応用、の具体的な3点に焦点を絞り、研究を推進した。 まず、高率に骨に転移する自然転移モデルの開発のために、ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231とマウス乳癌細胞株4T1にルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞株を作製し、in vivoでイメージングする系を立ち上げた。MDA-MB-231細胞の骨転移モヂルにおいては、通常移植後5-6週でX線上骨転移が確認できるが、in vivoイメージングを用いることによって移植後2-3週で骨での癌細胞の増殖を確認することに成功した。4T1細胞の肺転移モデルにおいては、in vivoイメージングを用いることによって移植後4週から生きたマウスで肺転移をモニターすることに成功した。 次に、MDA-MB-231細胞とマウス乳癌細胞株JygMc(A)を用いてマイクロアレイによる解析をおこなったMDA-MB-231細胞の場合は高骨転移株で発現が上昇している遺伝子を約10種類得た。さらにJygMC(A)細胞の場合は、TGF-β刺激にようて発現が上昇する遺伝子を数種類得た。現在、マイクロアレイによって得られた遺伝子産物の転移における役割の解析をおこなっている。
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