研究課題
乳癌や前立腺癌の骨転移はそれ自体が致命的になることは少ないが、骨痛や神経圧迫症状により患者のQOLを著しく低下させることが多く、骨転移のコントロールは多くのがんの治療において重要な課題である。最近ではビスフォスフォネート製剤などの台頭による積極的な骨転移治療傾向の兆しは見えるが、整形外科領域においては未だ骨転移に対する本質的治療はほとんどおこなわれておらず、諸問題解決の努力が十分になされていないのが現状である。近年、実験的骨転移モデルの解析から、骨に大量に存在するTGF-β(transforming growth factor-β)が癌の骨転移において重要な働きを担っていることがわかり、ともすれば、癌の骨転移の分子メカニズムの全体像が理解されたかに思われている。しかしながら、癌の骨転移は多種多様の因子群が関わる非常に複雑なシステムであり、TGF-βシグナルとその他数多くの骨転移シグナルネットワークがどのように作用しているのか、その仕組みは現在でもほとんど理解されていない。さらに、TGF-bやファミリーの一員で骨に大量に存在するBMP(bone morphogenetic proteh:骨形成因子)のシグナル研究については、骨転移への関与が示唆されつつも、未だ不明な点が多い。このような状況を打開する試みの一つとして、申請者は、癌の骨転移に関わるTGF-β/BMPシグナル伝達系を統合的に理解し、治療法を開発することを目指し、本年度は(1)TGF-β/BMPシグナルを中心とした癌の骨転移の分子機構の全体像の描出ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231の親株及び高骨転移株のマイクロアレイによる解析(2)TGF-β1BMPシグナル阻害剤とシグナル抑制因子遺伝子導入の治療への応用TGF-βシグナル阻害剤によるヒト乳癌細胞株MDA-MB-231の骨転移抑制の2点を達成した。
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