研究概要 |
麻酔薬の作用発現にはGABA受容体が重要な役割を担うが、GABA受容体とGABA抑制ニューロンネットワークが、個体レベルでの麻酔作用にどの程度関与するのかについては明らかでない。本研究は、GABA合成酵素(GAD)ノックアウト動物を用いて、個体レベルでの麻酔作用発現にGABAがどう関与するかを、我々の研究室で行っているホールアニマル脳・脊髄神経細胞からのin vivoパッチクランプ法と海馬スライスパッチクランプ法を使って解析し、麻酔薬の中枢神経作用におけるGABA抑制シナプスの役割を明らかにすることを目的とした。さらに、神経因性疼痛などGABAの脱抑制が関与する病態におけるGABAの役割も調べる。 本年度はまず、GADノックアウトマウスは、個体レベルでの麻酔薬への感受性が野生型と比較してどう変化しているのかを観察した。小動物用麻酔ボックスを作成し、セボフルラン、プロポフォール、ケタミンなどに麻酔作用機序が異なると予想される麻酔薬に対して、麻酔開始から入眠までの時間や麻酔からの回復時間(righting reflex)を測定した。この実験は現在進行中であるが、この結果をもとに次年度は、シナプスレベルでの麻酔薬への感受性の違いを検討するために海馬での電気生理実験に移る予定である。海馬ブラインドパッチクランプ法のセットはすでに完成しているが(平成14-16基盤研究(C),Nishikawa K et al. Brain Research 2005)、さらに神経細胞を同定しながらのパッチクランプを行う必要があるため、今年度の基盤(B)交付金から、パッチクランプ用正立顕微鏡と電極作成器、電極マイクロフォージを購入して、実験装置のセットアップを完了させた。次年度は、GADノックアウトマウスの海馬スライス標本で、微小シナプス電流の頻度やカイネティクスを測定する必要がある。
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