研究概要 |
平成17年4月から18年3月までに,悪性高熱症や関連疾患患者およびその血縁者22名でCICR(Ca-indused Ca release)速度の測定を行った.19名は摘出骨格筋の輸送に冷蔵宅配便を使用した.内訳は,悪性高熱症劇症型2名,亜型1名,術後悪性高熱症1名,悪性高熱症の家族歴11名,筋疾患4名,高CPK血症1名,熱中症家族歴2名であった.CICR速度の亢進があり悪性高熱症の素因があったと診断されたものは12名(悪性高熱劇症型2名,悪性高熱症の家族歴6名,筋疾患(CCD)2名,熱中症の家族歴2名であった.このうち衛星細胞の培養に成功したものは16名で,いったん-70℃で凍結保存した. 凍結細胞を解凍後培養しmyotubesに分化した状態で,ratioの測定を行った.カフェインおよびハロタン刺激による細胞内のカルシウムイオン動態を,CICR亢進が認めれたもの(亢進群)と認められなかったもの(非亢進群)で比較検討した.カフェインのED50は亢進群1.162mM,非亢進群2.537mMで有意差が認められた.ハロタンのED50も亢進群1.258mM,非亢進群は2.640で,有意差が認められた.骨格筋のリアノジン受容体の刺激薬であるカフェインやハロタンにより,CICR速度が亢進している患者から得られたmyotubesでは,カルシウムイオンが低濃度で上昇することが確認され,これは悪性高熱症の病態に大きく関与している. 新しい麻酔薬であるプロポフォールは,臨床使用濃度ではmyotubesのカルシウムイオン濃度の上昇は認められなかった.より高濃度にすると細胞内のカルシウム濃度の上昇が認められた.この上昇がCICR速度の亢進の有無に関連があるかどうか検討中である. 還流液の温度の影響は,温度を上昇させるとmyotubes内のカルシウムイオン濃度の上昇が認められたが,この反応はCICR速度の亢進の有無による差は認められなかった.また,10mMカフェイン刺激によるカルシウムイオン濃度の上昇は37℃と41℃でCICR速度亢進群非亢進群とも差はなかった. 悪性高熱症は稀な疾患であるため,ひき続き検討が必要である.
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