研究課題
基盤研究(B)
中枢神経組織にあらかじめ軽い侵襲を負荷しておくと、ある一定期間後に加わる強い虚血侵襲に対し、神経細胞が抵抗を示すこと(耐性獲得)が基礎研究で示されている.われわれは、3.5ATAの高気圧酸素(hyperbaric oxygen: HBO)負荷で、耐性誘導が獲得できることを示した.最大の耐性効果を誘導できるHBOの条件、および、機序を解明できれば、新たな治療戦略のブレークスルーとなりうる.本研究では、至適HBOの条件設定、および、その機序の解明を目的とした.100%酸素-1ATA、2ATA、3.5ATA酸素負荷(1日1回1時間、5日間)後のラットに、最終処置の12時間後に、8分間の前脳虚血を加えると、海馬CA1の神経細胞死が3.5ATAで最大に抑制されることが明らかとなった.マイクロアレイ、RT-PCR、ウエスタンブトットで、HBO処置後、神経栄養因子受容体(p75^<NTR>)および炎症/免疫(CCAAT enhancer binding protein δ,CD74)に関連する遺伝子・蛋白の増加が見られ、HBOによる虚血耐性誘導に深く関わっていることが示唆され.さらに、HBO処置前にアニソマイシンやシクロヘキサミドなどの蛋白合成阻害薬を投与すると、HBOで誘導される虚血耐性効果が拮抗され、p38 mitogen-activated protein kinase(p38 MAPK)の抑制薬併用で、耐性効果が回復、あるいは一部修飾されることが明らかになった.以上、本研究では、HBOによる虚血耐性誘導の機序にp75^<NTR>、C/EBPδ、およびCD74が関わること、蛋白合成阻害の研究(生物学的検証)からp38MAPKによる蛋白発現とシグナル伝達制御が虚血耐性誘導と深く結びついている可能性が明らかとなった.
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