研究概要 |
血管平滑筋の収縮は手術麻酔中には麻酔薬だけでなく、外科侵襲によっても影響を受ける。 その外科的侵襲のひとつに血管剥離の手技がある。その代表的な手法の血管平滑筋収縮能、血管内皮機能に及ぼす影響について検討した。 冠動脈バイパス手術におけるグラフトの採取法として周囲組織を温存するpedicle harvesting法と周囲組織を可能な限り切除するskeletonization法がある。これらの方法で採取された内胸動脈(ITA)グラフトおよび胃大網動脈(GEA)グラフトにおいて、血管内皮機能・平滑筋機能を、等尺性張力測定実験を用いて比較検討した。 両方法で採取されたITA,GEAをKCL(100mmol/L)を加えたKrebs液とノルアドレナリンで収縮させ、アセチルコリン、亜硝酸イソゾルビド、ジルチアゼムによる弛緩の割合を測定した。本研究で得られた知見は以下の通りである。 1)KCL、ノルアドレナリンによる収縮とジルチアゼム、亜硝酸イソゾルビドによる拡張はskeletonize、pedicle間で有意差は無かった。血管平滑筋機能はよく温存されている。 2)アセチルコリンでpedicled graftがskeletonized graftよりも有意に弛緩した。ultrasonic skeletonizationによる内皮機能障害があると示唆された。 3)以上より、ultrasonic skeletonizationによる採取時には血管への接触を最小限にするための細心の注意を要し、亜硝酸薬、カルシウム拮抗薬の術後投与はgraft hypoperfusionのリスクを軽減させると考えられた。
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