研究概要 |
平成19年度 1.系統別マウスにおける切開モデルの行動学的差異 A/JおよびCBA/Jマウスをハロタン麻酔(2-3%)下に足底に5mmの皮膚・皮下・筋肉への切開を行い,1針を7-0ナイロン糸で縫合した。覚醒後,自発痛関連行動を観察し,von Freyフィラメントと用い機械的刺激に対する逃避閾値を測定した.A/Jマウスは自発痛関連行動が術直後より少なく,術前と有意差を認めなかった.Von Freyフィラメントに対しては,軽度の痛覚過敏を示した.他方,CBA/Jマウスは術前に比べ,強い自発痛を認め,Von Freyフィラメントに対する強い痛覚過敏を認めた. 2.切開がマウス延髄(Rostral Ventromedial Medulla: RVM)ニューロン活動に及ぼす影響 A/J,CBA/Jマウスをウレタン麻酔下に人工呼吸とした.脳固定器に頭部を固定した.開頭しBregmaを同定後、硬膜を切除した脳表面を適宜、生理食塩水で浸し,タングステン電極(10-15Ω)を硬膜開窓部より刺入し,小脳部を越え,Rostral Ventromedial Medulla: RVM領域まで進めた.マイクロマニピュレータを2-5μmずつ進めた.自発活動が少なく,足底部や大腿部にピンセットで20gの力(pinch刺激)に応じて活動電位を生じるON cell,自発活動が多く(2-5 Hz以上),足底や大腿部への侵害刺激で自発活動が減じるOFF cell,自発活動が多く(2-5 Hz以上),侵害刺激でも自発活動にまったく変化がみられないNEUTRAL cellの単一ニューロン活動を分離した(S/N ratio>3-4).次いで受容野中心(足底部)に皮膚・皮下・筋肉への切開を行い,1針を7-0ナイロン糸で縫合した.切開部より1mm離れた部位にvon Freyフィラメント刺激を行った.A/Jマウスにおいて,ON cellは切開後,自発活動の増加を認めなかったが,Von Freyフィラメントに対する応答は軽度増強した.OFF cellは切開においても活動電位の頻度に有意差を認めなかった.他方,CBA/Jマウスでは,切開によりON cellは自発活動が現弱し,OFF cellの自発発射頻度が低下した.
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