研究概要 |
ケタミンで麻酔したブタの頸動脈を露出、切開し、脱血死させる。開胸後、心臓を摘出し、4℃に冷却したクレブス液に入れる。ついで、摘出した心臓より冠動脈(左冠動脈[前下降枝,回旋枝]、右冠動脈、内径約1.5mm)を分離し、周囲の脂肪および結合組織を十分に除去した。血管内皮細胞は,ピンセットなどを血管内腔に通過させて器械的に除去した。 冠動脈を約2mmの長さのリング状標本とし、酸素95%+炭酸ガス5%を通気した37℃のクレブス液中で等尺性張力変化を測定した。スフィンゴリピドの一種sphingosylphosphorylcholine(SPC,0.01-10μM)の累積適用で冠動脈は強い収縮反応を示した。SPCによる収縮の15分前より、揮発性麻酔薬セボフルラン(0.5-2MAC)または選択的Rho-キナーゼ拮抗薬Y27632(2μM)を冠動脈標本に付加した。セボフルラン、Y27632ともに、SPCによる収縮反応を有意に抑制した。 ついで、冠動脈標本をSPCで処置し、この時に平滑筋内のRhoA、Rho-キナーゼ活性が増大するか否か、またセボフルランあるいはY27632処置がこれらのキナーゼ活性に影響を及ぼすか否かをウエスタンブロット法で測定した。この際、膜分画と細胞質分画に分けて、それぞれの分画中のRhoA、Rho-キナーゼ活性を測定した。セボフルラン(2MAC)またはY27632(2μM)は、SPC処置で増強した平滑筋内のRhoA、Rho-キナーゼ活性をほぼ同程度に抑制した。 共焦点レーザ走査型顕微鏡一式が入荷後、調整が終了し、現在、hydroethidine(2μM)による血管平滑筋内のフリーラジカル産生の有無を検討する準備を行っている。今後は、最近注目されているRho-キナーゼ活性に伴う細胞内フリーラジカル産生とそれに及ぼす麻酔薬作用を辞価する予定である。
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