神経親和性に強いインフルエンザウイルスをマウスに感染させ、脳内グリア細胞におけるMMP9の定性と脳病理変化を検討し、インフルエンザ脳症の病態解明を行った.1)エクトヌクレオチダーゼ発現からMMP-9発現に至るまでの過程の検討:ここまでの研究で同定した感染脳症時にエクトヌクレオチダーゼの発現充進を示す細胞をin vitroで培養し、感染-動物やgp120で感染させエクトヌクレオチダーゼ発現を調べた。また産生された酵素が脳グリア細胞のTNF-α、更にMMP-9発現に影響するかin vitroで検証し、そのシグナルを検討した。2)P2受容体発現減少の検討:In vitroで培養星状細胞を感染させ、ここまでの研究で同定した感染脳症時に星状細胞で発現減少の見られるP2(Y)受容体の発現の低下を検討し、関連シグナルを検索した。基底膜とMMPs発現のパラドックスの検討:多くの脳症でMMPsの発現上昇が見られるが、基底膜においてはコラーゲンやラミニンの沈着も多く観察され、これがグリオーシス等の病巣になるという報告も多く存在し、このパラドックスが研究を阻んでいる。この問題を検討するために、トランスウェルで血管内皮細胞を培養し、細胞下から星状細胞由来のMMP-9を与え、血管内皮細胞の細胞外基質産生にどのように影響するか検討した。またこの実験系を用い、下方からのMMP-9投与による血管内皮細胞の透過性の変化も調べた。 【考察】今回のマウス実験よりインフルエンザウイルス感染が、血管内皮障害から始まる海馬でのNO産生と血管拡張、さらにアストロサイトの活性化・アポトーシスが病態を形成することが推察された。このことよりNOとアポトーシスの抑制が治療のターゲットになると考えられた。
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