研究概要 |
前年度に引き続きXIAPと腫瘍細胞アポトーシスの関係を腎細胞癌について検討した. 1.SmacおよびXIAPの正常腎および腎癌組織,細胞培養株における発現の検討:正常腎ではSmacおよびXIAPのいずれもが尿細管細胞で発現していた.腎細胞癌34例の検討ではsmacは正常腎よりも低発現で,異型度や進達度との関連はなかった.XIAPは高異型度,高進達度で発現が増強していたがgrade3のみは低下していた.6種の腎癌細胞株を用いて検討したところ,XIAPはCaki-1で高発現で,smacはKRC/Yでの発現が高度であった.2.shRNAの遺伝子導入とstable cloneの作成:XIAP shRNAをコードしたベクターをCaki-1細胞に導入し,stable cloneを樹立した.このうち2つがXIAPの発現が親株に比して79.4%と86%に低下していた. 3.BCL-2抑制小分子(HA14-1)の抗腫瘍効果の検討:これらcloneと親株,mockについてHA14-1の効果を検討したところ,その効果はcloneで有意に高かったがわずかな差であった.また,抗FasIgMクラス抗体(CH-11)に対する感受性を検討すると,HA14-1との併用で相加効果が得られた.4.smac類似合成XIAP抑制ペプチド(Smac-Ant)とCDDPの併用効果の検討:さらに,XIAPの抗アポトーシス作用の検討のためにSmac-AntとCDDPのCaki-1に対する抗腫瘍効果の検討を行ったところ,その併用で極めて高い腫瘍抑制効果が観察された. <結論>腎癌細胞においてはXIAPがアポトーシス刺激に対する抵抗性に主要な役割を果しているが,shRNAによるXIAPの抑制だけでは不十分であり,効果的な治療法の開発にはHA14-1によるBCL-2の抑制やSmac-AntによるさらなるXIAPの抑制が必要となると考えられた.
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