研究概要 |
狭pHレンジ二次元電気泳動法をもちいた膀胱癌のプロテオーム解析で癌細胞に高発現する蛋白質群を同定し,そのひとつが7番染色体上のC7 or f24という遺伝子産物であると同定した(同定前の蛋白質名をわれわれ独自で暫定的にU7と命名していた).C7 or f24蛋白質は蛋白質データベース上に機能未知の仮想蛋白質として登録されている.他生物種のホモログも同じく仮想蛋白質と登録されており,この分子の機能は推定できない.C7 or f24蛋白質に対するモノクローナル抗体を樹立し,膀胱組織でウエスタンブロットを行ったところ,正常上皮に比べて癌組織で強く発現していることが検証された.他の癌細胞株を用いたウエスタンブロットでもC7 or f24蛋白質の強い発現を認めた.しかしながら,Rat-1細胞またはNIH3T3細胞へのC7 or f24遺伝子導入実験では癌性変異は見られなかった.レトロウイルスを用いてC7 or f24蛋白質を安定して発現するNIH3T3細胞を樹立したところ,対照細胞に比べて有意な増殖亢進が認められた.C7 or f24蛋白質の産生を強く抑制するsiRNAを設計し,数種の癌細胞株にトランスフェクションしたところMTTアッセイにて有意な増殖抑制が認められた.以上より,C7 or f24蛋白質は癌細胞の増殖機転に何らかの役割を担っており,この分子が癌治療の標的として有用となる可能性が示唆された. 以上の成果を学術誌上に報告した.
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