研究課題
【目的】腎細胞癌において、第14番染色体長腕(14q)は第3番染色体短腕(3p)に次いで頻度の高い染色体欠失部位であり、同領域に癌抑制遺伝子が存在する可能性が指摘されてきた。前年度われわれは14q32に存在する刷り込み遺伝子であるDLK1(Delta like homolog)が腎細胞癌の新規癌抑制遺伝子であることが明らかとなった。今年度はさらに腎癌組織におけるDLK1遺伝子の不活化メカニズムについて検討した。【方法】腎癌由来細胞株15株、腎癌手術切除標本50例からDNAを抽出した。DNAメチル化パターンをbisulfite genomic sequencing法とTA cloning法にて検討した。【結果】DLK1は刷り込み遺伝子であることから50%メチル化であるDMR(Differentially Methylated Region)が存在することが予想された。しかしDLK1の発現にかかわるCpG islandのメチル化はDLK1のpromoter, gene bodyには認められず、DLK1の3'側90kbに存在する相補的刷り込み遺伝子GTL2の1.3kb上流に認めた。このDMRは正常腎では50%メチル化状態であるのに対し腎癌細胞・腎癌組織では100%メチル化状態であった。【考察】腎癌発生過程においてDLK1の相補的刷り込み遺伝子GTL2の上流にあるDMRが異常メチル化を獲得することがDLK1を不活化につながっていることが明らかとなった。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件)
Human Molecular Genetics 15
ページ: 821-830