本研究では、細胞の上下左右の方向性と他細胞との相互関係を調節するaPKC、PAR-3などの一連の細胞極性関連遺伝子や未知の極性制御分子に着目し、前立腺癌の再燃の機序と病態の解明を試みた。 前年度までの研究で、ヒト前立腺癌でaPKCの発現が高くなっていることをすでに明らかにしているので、前立腺癌細胞株にaPKCのsiRNAを導入したところ、aPKCの発現が減少に伴って、パラクライン増殖因子の1つと考えられるIL-6の分泌量が減少し、また細胞の増殖が抑制された。 aPKCの前立腺癌細胞や組織での局在を免疫染色法や蛍光法で調べたところ、細胞内と細胞膜に存在したが、特別な部位の局在は癌でははっきりしなかった。しかし、染色強度と前立腺癌の再の増加は相関する傾向が認められた。aPKCの局在、強度とバイオマーカーとしての位置づけは今後の課題と考えられる。 また、従来より検討してきたアンギオテンシン受容体分子群の前立腺細胞での役割と、細胞極性因子とのかかわりの検討では、アンギオテンシンIIなどでアンギオテンシン受容体を刺激するとIL-6の分泌が促進され、細胞内の酸化ストレスの増大が起こることが明らかとなった。aPKCもこのIL-6の分泌を促進することからこのアンギオテンシンII受容体とaPKCのIL-6など増殖因子分泌を介した関係、またホルモン依存性との関係が示唆される結果を得た。
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