研究課題
EGF受容体以下のシグナル経路において、phosphatidylinositol 3-kinase(PI3K)/Akt経路が活性化され、anti-apoptoticに働くことがシスプラチン(CDDP)に対する耐性化機序の1つとして重要である。そこで、今年度は当初の計画に加えて、PI3K inhibitor(wortmannin)がCDDP耐性卵巣癌に対する効果についても検討した。ヌードマウスにCDDP耐性株であるCaov-3を接種し、その後CDDPとwortmanninを単独または併用投与した。その結果、wortmannin(2mg/kg)とCDDP(5mg/kg)の併用投与により、1)腹部周囲径、腹水量、腹腔内腫瘍重量が各薬剤の単独投与に比べて有意に減少した(p<0.01)。2)CDDPにより促進される腫瘍細胞におけるAktのリン酸化が、wortmannin併用により抑制された(p<0.01)。3)単独投与に比較し、有意に腫瘍細胞のアポトーシス誘導を増加させた(p<0.01)。これらからPI3K inhibitorは、CDDP耐性卵巣癌において、CDDPの抗腫瘍効果を増強させることを明らかにした。この研究成果は国際的に高く評価されている雑誌に掲載された。その他、今年度の当初の計画に沿って実験を進め、以下の結果が得られている。CDDP単独投与に比べEGF受容体のシグナルを阻害するgefitinib(イレッサ)を併用することで、1)cell viabilityの抑制作用は増強し、2)apoptotic signalであるPARP(poly ADP-ribose polymerase)発現をより増強した。イレッサはCDDPが誘導するanti-apoptoticな作用を解除しapoptosisを増強することが示唆された。今後はin vivoの系において更なる研究を行う予定である。
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Endocrinology (in press)