研究概要 |
子宮内膜癌は遺伝子変異の蓄積を経て発生する。これら遺伝子変異を反映する蛋白を早期に捕捉し、癌の診断・治療に役立てることを目的とした。 正常子宮内膜、内膜増殖症、内膜癌の人体組織について各種遺伝子プロモーターのメチル化状態を検索した。Sodium Bisulfite Modification法で処理した後、目的遺伝子プロモーターにメチル化特異的プライマーを設定し、P CRを基本とした定量的メチル化測定法を行う。正常内膜においてもhMLH1遺伝子メチル化が進行していることが明らかとなった。MLH1蛋白の発現もガン細胞のみならず周辺部の正常組織にも消失が見られた。これらは、発癌過程における遺伝子変化の中で早期変化であることが示された。 正常→DNAミスマッチ修復遺伝子(MMR)のプロモーターメチル化→MMRの機能低下→遺伝子不安定→PTEN などの遺伝子変異→細胞増殖→癌への道順を示すものである。特に、MLH1遺伝子プロモーターのメチル化症例は有意差を持ってPTEN遺伝子のフレームシフト変異が多いことが判明している。P53変異はMLH1メチル化経路とは相関せず別の経路が推定される。 現在、MMR遺伝子群の中で他の遺伝子、MSH3,MSH6,MLH3その他、h TERT,TGF-β、p53、K-Rasなどの遺伝子変異について検索中である。特に、WWOXは新規の癌抑制遺伝子で癌細胞に導入するとアポトーシスが誘導され発癌抑制に重要な役割をなすと期待される。多くの癌でメチル化による機能抑制が推測され早期診断の標的分子と期待される。同一症例における遺伝子発現、蛋白発現を、Laser capture microdissection法にて病変部を切り出し、組織形態と対比して検討する予定である。 正常内膜における遺伝子メチル化現象と内膜癌の発生リスク因子などとの相関、年齢的因子など、遺伝子老化の観点から検討中である。
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