研究課題
子宮内膜癌は一個の細胞内で生じた遺伝子変異の蓄積を経て発生する。これら遺伝子変異を反映する蛋白を早期に補足し、癌の診断・治療に役立てることが本研究の目的である。昨年度まではDNAミスマッチ修復遺伝子(MMR)のプロモーターメチル化が極めて早期の変化であることをしめした。これは、発癌おける機能異常はMMR遺伝子に限らず多くの遺伝子群において、メチル化が関与している可能性を示唆するものである。そこで本年度ではすでに正常子宮内膜から樹立に成功している不死化細胞を用いてどのような遺伝子群が内膜発癌に重要な作用を持つかについて検討した。この検討により発癌に絡む早期変化としての蛋白異常を検出できる可能性がある。方法としては正常内膜から我々が樹立した正常機能をもつ不死化株化細胞に、変異K-RAS遺伝子の導入、PTEN遺伝子の機能を抑制しAkt活性化機能を促進させることにより細胞の癌化が達成できるか調べた。結果は不死化細胞を完全な癌化に導くのはk-RASの点突然変異で充分であり、他の因子は不要であることが判明した。正常内膜から発癌へ導く遺伝子変異はRB遺伝子の不活性化、テロメラーゼ酵素の活性化、K-RASシグナルの活性化が必要で且つ充分な条件であることが判明した。そこでこれら変化が実際の人体において子宮内膜癌発生に関与しているのか調べる目的で臨床材料について検討した。テロメラーゼ活性はすべての子宮内膜癌に認められた。リン酸化シグナル経路の活性化を示すリン酸化ERKの発現もすべて癌組織に認められた。これらはリン酸化シグナルの上流に位置するKRASやBRAFの点突然変異とは独立した変化であることが判明した。多くの癌腫に見られるBRAFの変異は極めて少なく、K-RASの変異は23%に認めたが、下流のリン酸化シグナルとは相関しないことも判明した。これらのことから、子宮内膜癌の発癌機序のハブ機能を有するにはテロメラーゼの活性化とMEK-ERK経路であることが示唆された。従って、診断治療に有効な分子標的はこれらに絡む蛋白であることが推定できた。
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