研究課題/領域番号 |
17390449
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
京 哲 金沢大学, 医学系研究科, 講師 (50272969)
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研究分担者 |
中村 充宏 金沢大学, 医学部附属病院, 助手 (50377397)
井上 正樹 金沢大学, 医学系研究科, 教授 (10127186)
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キーワード | telomerase / hTERT / adenovirus / gene therapy |
研究概要 |
我々はテロメレース触媒サブユニットであるhTERT(Human telomerase reverse transcriptase)遺伝子プロモーターを世界で初めてクローニングし、このプロモーターが癌細胞特異的に活性化されることを報告してきた。hTERT遺伝子プロモーターが高度の癌特異性を有することから、アデノウイルスの複製に必要な自己蛋白E1Aの遺伝子の上流にこのプロモーターを組み込みめば、E1Aがテロメレース陽性細胞でのみ発現することになり、ウイルスの複製が可能になる。したがってこのような組み替えウイルスは、テロメレース陽性の癌細胞においてのみ複製増殖可能な増殖型ウイルス(TRAD : telomerase-specific replication-competent adenovirus)であり、これを用いて従来型の遺伝子治療とは全く異なる新たなシステムを構築することを研究の目的とした。 我々は今回の研究で、まず卵巣癌に対するTRADの抗腫傷効果について検討を加えた。はじめに卵巣癌細胞SKOV3に対するin vitroの抗腫瘍効果を検討した。TRADを種々のMOIにてSKOV3細胞およびコントロールとして正常線維芽細胞に作用させると、TRADはSKOV3細胞に対してのみ著明な殺細胞効果を有し、正常細胞に対する毒性は軽微なものであった。TRAD-GFPを感染させた実験では、TRADの癌細胞特異的複製増殖が確認された。次いで、SKOV3細胞をマウス腹腔内に接種し、腹膜播種が出来ることを確認し、TRADを単独(1-10MOI)あるいはCDDP併用(0.5mg/body)にて腹腔内注入した。48日後の検討ではCDDP単独およびTRAD単独で腹膜播種巣の数の有意な現象が確認できたが、両者の併用により著明な抗腫瘍効果が確認できた。また生存率の検討では併用群で単独群あるいは未治療群に比し有意な延長を認めた。これらの治療マウスには各臓器の異常や血液所見の異常は認められなかった。以上のことからTRADの卵巣癌、特に腹膜播種病変に対する有用性が示され、今後さらに臨床応用に向けた基礎実験と臨床試験(phaseI/II)を進めてゆく計画である。
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