研究分担者 |
根本 則道 日本大学, 医学部, 教授 (80096875)
北村 勝彦 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (30195284)
齋藤 滋 富山大学, 医学部, 教授 (30175351)
山本 直樹 国立感染症研究所, エイズ研究センター, センター長 (00094053)
稲葉 憲之 獨協医科大学, 医学部, 教授 (70114238)
|
研究概要 |
HIV垂直感染には,脱落膜・胎盤の局所因子が深く関与する。胎盤において合胞体細胞やHofbauer細胞にはHIVが感染し,またHIVに感染した脱落膜リンパ球は胎児循環中に入る機会があるが,子宮内感染は稀である。一方,マラリアや絨毛羊膜炎などの合併によってHIV子宮内感染が誘発される。ヒト子宮内に形成される脱落膜は多数の免疫細胞を含むが,これがHIV感染において何らかの関与をする。すなわちHIV感染の標的あるいはリザーバーとなっている可能性がある。そこで,脱落膜より分離したCD56LGL,NKT細胞株MOTN,NK細胞株KHYGにin vitroでHIVを感染させたところ,前二者においてはウイルスの複製が見られたのに対し,KHYGはHIVのintegrationは見られるものの,virus RNAの発現や上清中へのp24の産生は認められず,リザーバーとなる可能性が示唆された。しかし霊長類細胞でHIV感受性を調節するTRIM5αの発現には差がなく,他の機序が関与すると推定された。HIVを有効に複製するNKT細胞株MOTNと,不完全な複製を行うKHYG細胞の遺伝子ならびにタンパク発現プロファイルを網羅的に解析中である。次に,絨毛細胞は分化の程度によりHIV感受性が著しく異なり,分化したsyncytiumはHIV感受性であるがcytotrophoblastはHIV抵抗性であることが判明した。さらに,TLRを介したシグナルがHIV複製を抑制することから,未知の内在性TLRリガンドがHIV垂直感染を調節している可能性が示唆された。最後にHIV垂直感染では,母体の栄養状態や免疫状態に加えHLAハプロタイプやHIVサブタイプにより感染効率に著しい差が生じることが知られている。そのための臨床的解析を心がけたが残念ながら(医師としては幸いなことに)研究期間中に垂直感染を来たした症例は日本では見られず,ラオスとの共同研究を進めている。
|