研究概要 |
本研究では、老人性難聴に対して分子遺伝学的手法を用いてアプローチすることで、従来加齢のためと考えられ、研究の進んでいなかった老人性難聴のメカニズムの解明の基盤整備を目的としている。本年度は、昨年度までに引き続き、本大学大学院スポーツ医学研究科が中心となって実施している、「熟年体育大学」参加者(40-75歳)のうち昨年度とは異なる200名をセカンドコホート群として、十分な説明の上、同意の得られた対象者に聴力検査と採血を行い、聴力と遺伝子の相関解析を実施した。本年度は、先天性難聴の原因遺伝子とくに後天性・進行性の難聴を呈する常染色体優性遺伝形式をとる15遺伝子30SNPs (KCNQ4, COCH, DFNA5, GJB2, GJB3, GJB6, COL11A2, TECTA, MY06, MY07A, MYH9, WFS1など)のSNPsを解析し、遺伝子型と聴力との相関解析を行った。その結果、昨年度見出された2つの遺伝子のSNPsにおいて老人性難聴の典型的な特徴である高音域での聴力の低下と相関が認められ、老人性難聴と関連する遺伝子多型である可能性が高いことを明らかにした。この候補遺伝子の多型はプロモーター領域に存在していたため、老人性難聴発症のメカニズムを推定するために、周辺領域のSNPs解析と、プロモーター領域のクローニングおよび遺伝子発現解析を行っている。また、加齢促進モデルマウスを用いて、幼若期から老齢期までのマウスを用いて、ABRを行うとともに、そのマウスから内耳(蝸牛)を摘出し、RNAを抽出して、リアルタイムPCRを用いて、SIM2などいくつかの遺伝子の発現量を測定した。また、野生型との遺伝子発現量の比較検討を行った。
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