研究概要 |
骨髄細胞を用いた嗅組織の再生医療へ臨床応用への可能性について検討するため,実地臨床に近い形での嗅上皮局所投与(点鼻)で骨髄細胞が嗅細胞へ分化するか否かの検討を行った. 5週齢SCIDマウスに硫酸亜鉛を点鼻して嗅上皮障害を惹起させ、GFPマウス由来骨髄細胞を点鼻した。嗅上皮は呼吸上皮化生化し、粘膜および粘膜下組織に少数のGFP^+OMP^-細胞が観察された。点鼻によっても嗅上皮内に骨髄細胞が生着することが明らかになったが、局所炎症によりサイトカインなどの微小環境が嗅細胞への分化より組織修復に有利な条件になっている可能性が示唆された。 上記の結果から,炎症の場においては骨髄細胞を嗅細胞分化への方向付け(例えば,NotchおよびNotchリガンドを介した分化促進など)をして局所投与することが必要と考えられる。このため同じ感覚細胞である内耳有毛細胞の分化に関与するとされるNotchSignal系が嗅細胞分化においても関与するか否かを検討した。Notch1,Hes5の発現パターンをBalb/cマウス胎生11日から生後14日までin situ hybridizationを用いて観察した。嗅上皮に、Notch1は観察期間を通じて発現していたが、Hes5は胎生期にのみ発現していた。Notch signal系は嗅上皮においても正常発生に重要な役割を果たしていると考えられた。次に,嗅上皮再生におけるNotch Signal系の発現を検討した。Balb/cマウスに硫酸亜鉛を点鼻し嗅上皮障害を惹起させて、経時的にNotch1,Hes5ならびにMath1,Jagged2の発現を観察した。Math1,Jagged2の発現は強く,一方Notch1とHes5の発現は弱かった。再生過程においてもNotch Signal系は重要な役割を果たしているが、分化抑制系の遺伝子にdown regulationが起きている可能性が示唆された。
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