研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、頭頸部管腔臓器再生における血管の新生と組織修復過程を免疫組織学的、生理学的に調べ、組織再生のメカニズムを明らかにすることにある。平成17年度の本研究にて、骨髄間葉系幹細胞の採取とコラーゲン内での3次元立体培養、血管前駆細胞、線維芽細胞、脂肪組織由来幹細胞の採取と培養、標識法を確立した。平成18年度は頭頸部管腔臓器の切除モデルを作製し、生体材料とともにこれらの細胞を移植し、レシピエント組織における血管新生、組織再生の経時的変化、移植細胞の分化を解析した。実験動物の取り扱いに関しては福島県立医科大学動物実験ガイドラインに沿って、愛護的に行った。ラット気管の欠損部にm-YFPで標識した線維芽細胞とコラーゲンスポンジを移植したところ、多くの円柱線毛上皮細胞が認められ、上皮層の増殖、移動、分化などを促進することが判明した。一方、移植した線維芽細胞は2週間でほぼ消失し、早期の創傷治癒と上皮化促進に寄与しているものと考えられた。自己のラット脂肪組織由来幹細胞とマトリゲルを皮下に移植すると、細胞を含まないコントロールに比べて著明な血管新生を認めた。次にラット気管に自己の脂肪組織由来幹細胞とコラーゲンスポンジを移植したところ、コントロールに比べて、血管新生が多くみられ早期に上皮化し円柱状の線毛細胞に分化した細胞や偽多列線毛上皮層が認められた。イヌ口蓋の欠損部に骨髄間葉系幹細胞とβ-TCPを移植し、粘膜上皮、結合組織、一部骨の組織再生を得た。イヌ声帯および甲状軟骨の欠損部にコラーゲンスポンジとポリプロピレンメッシュを移植したところ、粘膜上皮、結合組織の再生を得たが、安定した声帯の隆起形態は得られなかった。今後の研究発展が望まれる。これらの結果から頭頸部管腔臓器再生において血管の新生の誘導が重要であり、早期の組織修復を得るためには適切な細胞の移植が効果的であることがわかった。
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