研究課題
基盤研究(B)
神経芽腫がん幹細胞を同定し、それらをターゲットとする治療法の開発を目指して、以下の研究を行い、興味ある結果を得た。1.神経芽腫がん幹細胞様細胞株に特異的に発現する遺伝子の同定Sloan-Ketteringがん研究所で確立された神経芽腫細胞株N-type, I-type, S-typeのうち、I-type細胞株は神経芽腫幹細胞に近いと考えられている。そこで、神経芽腫cDNA libraryから同定した5300 cDNAの中からI-type特異的に発現する新規遺伝子をスクリーニングし、候補遺伝子を同定した。2.神経芽腫初代培養細胞におけるがん幹細胞マーカー分子の発現神経芽腫1、2期11例、3期8例、4期15例の計34例について、腫瘍細胞の初代培養を行った。また、神経芽腫細胞株6個を併せて対象とした。初代培養細胞はsphereを形成し、培養系ではほとんど増殖しないと考えられている早期例でもsphereの中にBrdU陽性細胞が存在することから、幹細胞様の腫瘍細胞が存在することが示唆された。また、特異的抗体を用いた免疫染色を行ったところ、神経幹細胞のマーカーであるNestinとTUJ1は早期の自然退縮傾向を有する予後良好な神経芽腫において発現が高く、とくにNestinの発現は1歳未満症例の自然退縮傾向の強い神経芽腫において高かった。p75NTRも同様の傾向が見られたが、全体的に初代培養神経芽腫細胞においてはその発現は低かった。また、神経幹細胞の新しいマーカーとして注目されているp63およびp73については、病期とは無関係に発現率が高く、今後はそれらのバリアントであるTA formとdelta-N formについて、発現レベルと局在について検討する必要があると思われた。
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