研究概要 |
1.イヌ歯周病モデルを応用した骨再生研究 ビーグル犬の鼠径部皮下脂肪よりASCsを採取しin vitroで増殖させた。と同時に、下顎第2,3,4前臼歯に欠損の高さが約5mmの3級根分岐部欠損を作成し、慢性炎症を惹起させるべくアルジネートを充填した。2週間後に再度全身麻酔を施しアルジネートを除去した後、末梢血より調整したPRPにASCsを混入させ10%塩化カルシウムとともにゲル化したものを欠損部位に注入移植した。細胞移植後4週目にX線および組織学的に評価を行った。その結果、移植後4週目においてX線写真上、歯周組織欠損部位のX線透過性の減弱が認められ、組織学的にも部分的ではあるが骨再生像が確認された。また移植後12週目に行った抗オステオカルシン抗体を用いた免疫組織染色像において、歯槽骨内に陽性細胞を多く認め、良好な骨再生が起こっていることが確認できた。 2.ウサギ下肢虚血モデルを応用した末梢血管再生研究 日本白色家兎の鼠径部皮下脂肪よりASCを抽出し培養増殖させた後、再度全身麻酔下に両側の大腿動静脈を完全に切離し下肢虚血モデルを作成した。その後直ちに自家由来ASCを片側の下肢筋肉内に注入移植した。移植後2,4,6週目に肉眼的な虚血下肢の状態、赤外線サーモグラフィーによる皮膚温測定、選択的血管造影による下肢血行の評価および組織学的評価を実施した。その結果、(1)肉眼的には実験群においては発生する壊死組織の面積が縮小する傾向にあった。(2)赤外線サーモグラフィーにより実験群において若干の温度上昇を認めた。(3)血管造影上、6週目の所見ではコントロール群に比べて実験群において豊富な血管の描出が認められた。(4)組織学的所見では実験群において毛細血管数の増加が認められた。以上より、日本白色家兎においても自己由来ASCにより虚血下肢において血管再生効果があることが示された。
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